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第1回 11BOXES 芦沢啓治建築設計事務所 埼玉県川口市

コラム記事:建築家と作る家

11-BOXES

自分が設計した家に遊びにいくとき、なんとなく浮き浮きした気分になる。
幼馴染に会うような、あるいは故郷をたずねるような気分である。部屋にはいると、自然と目は360度ぐるりと空間をチェックする。そして当時の苦労や喜びをもう一度思い出して、ついニヤリとしてしまう。

11BOXESは、何を隠そう私が独立して初めて作った住宅である。まるで自分の子供のように、あれから3年もたったのかと感慨にふけってしまう。

ふと考える。
この家は誰のものかと。

クライアントのものであることは間違いない。にも拘わらず、なぜこれほどの情感を感じてしまうのだろうか?

自分の空間だと心の底では思っているのではないか?
何をおこがましいことをと思われてもしかたがないが、これこそ注文住宅成功のエッセンスかもしれないと、最近思うのである。

11BOXESでは、クライアントの意見を聞きつつも、自分のものであるかのように設計をはじめてしまった。最初の打合わせで彼らの考えと私の考えがぴったりと一致していると思ったがゆえである。普通の考え方からすれば大いなる勘違いだといっても良い。ところが、その効果は覿面(てきめん)である。仕事とはいえ、自分のものでもあるから、俄然モチベーションはあがる。設計者のモチベーションはそのまま施工業者のモチベーションとなり、そして職人へと気持ちが伝わっていく。みなが自分のものかのように、その住宅に関わりはじめたとき、極めてスムーズに現場は進行していく。様々なトラブルに対しても、施工者、職人からアイデアが出てくるようになり、時に失敗が成功を生むような奇跡さえも起こる。

そして竣工、大団円をむかえる。

家作りは多くの人にとって人生にいくつもない最大のドラマである。そのドラマを成功させる秘訣は、一にも二にもクライアントと設計者の幸せな出会いにある。11BOXESの経験から、私はそう言い切ることに躊躇しない。


敷地は準工業地域にある、私道を挟み込んだミニ開発の一部である。施主は夫婦二人で、専門誌を熟読する建築通である。
それだけではなく、土地の取得にあたり既に容積率や建坪率の検討はなされ、自分たちの生活像を描いていた。多趣味な彼らにとってこの住宅は、生活を楽しむための装置だという思い切りの良さがあり、それがこの家のアッケラカンとした爽快感につながっている。

平面図

平面図、断面図。1階が、倉庫、書斎。2階がキッチン、リビング。3階に水廻り、寝室。構造的にも効かせている階段を真ん中に配置することによって、独立した部屋を小さながらも作り出している。また2階には2層分のボリュームをもたせ空間の自由度を高めている

構造ユニット
*1

鉄骨ユニット
*2
構造ユニット。
小さな平面を生かしきるひとつの手法として、工場で鉄骨ユニットをつくり現場で積み上げるという工法を採用している。これにより鉄骨の精度、建て方精度を上げ、外壁に張られるALC(軽量気泡コンクリート板)を逃げ寸法を取らずに鉄骨に設置することに成功している。

11個の鉄骨ユニットを積み上げた。三つのスパン2.5m/1.7m/2.2mがあり(間口は4.95mで共通)2.5mは1階の車庫、リビング、寝室のサイズ、1.7mは階段、2.2mは書斎、キッチン、バスルームの寸法である。敷地の中に必要な機能を入れ込むという検討を繰り返すことで、発見した寸法であり、この土地の大きさだからゆえの寸法ではあるが、2.5mという寸法は、トラックに載せることのできるぎりぎりの大きさでもある。


夜景と外観

夜景。外観。1階は、屋根付の車庫となる。外壁は、ALC板に断熱塗料。全面のガラスは、製作のスチールサッシ+はめ殺し窓と、ひき違いのアルミサッシをいれている。車が入ると自動的に電気がつくようになっており、同時に防犯性も高めている。

構造ユニット   鉄骨ユニット
M3F
2階の吹き抜けを、ガラス清掃のためのキャットウォークから見る。キッチンの上部は、最近床がはられた。プロジェクターを天井から吊り下げ、省スペースながら、居心地の良いホームシアターとなっている。植栽ののっている箱は、押入れ。ゲストルームとしても機能する。
  2F
東面に大きく開いた開口部から入る、朝日。木製のローテーブルは、アッシュの無垢材を、もともとクライアントが持っていたテーブルの足に取り付けたもの。空間の大きさや使い勝手を検討し、新しく家具作ることで小さい住宅はより機能的になっていく。

2F   1F
2F
キッチン。厨房メーカーに製作を依頼。吊戸棚、バックカウンターはスーパーロボット製作。薄板鉄板と角パイプによってつくられている。吊戸棚には、ツインカーボによる引き戸が一枚だけつけられており、見せてもよいもの、または使用頻度の高いものを開放している部分に仕舞っている。食器洗い機はミーレ。水洗金物はグローエ。奥に見える机と椅子のスペースがダイニングテーブル。天井は、仮説の床(鉄板を曲げたもの)の裏側。繊細なリブが、飛行機の羽の構造のようにみえる。
  1F
玄関。可動式の下駄箱。半透明の扉の奥が書斎。階段下は、収納とトイレ。この階段は引き戸によって閉じることができ、冬場の冷機、夏場の冷房を閉じ込めておくことができる。

構造ユニット   3F
階段の踊り場件、洗面。洗面の高さは85cm。そこにドラム式の洗濯機が収容されている。通路空間を、単なる通路空間にしないことを徹底している。
2F   1F
3F
寝室と、対面のバスルームは、屋上からのトップライト兼ハッチからの採光で明るさが確保した。ベッドのヘッドボードの裏は、約4メートルのウォークインクローゼット。寝室側のガラスは遮光ブラインドを設置しており、左手にみえるのが引き戸により暗くすることが可能。
  バスルーム
クリーム色の、丸いタイル張り。右手にみえる小さい光の丸は、クローゼットから照らしている光をレンズに集めて発光させた特注照明。常々お風呂場用の照明は使いたいものがないと思っていたので、特注にて製作。

構造ユニット   屋上
洗濯物干し場。室外機置き場。屋上にあがると建築面積が小さいことに改めて驚かされる。現在は、全面木製デッキが貼られ、夏場の日射の負荷をさげるとともに、屋上ライフをより一層楽しいものにしている。

建築家紹介

芦沢 啓治(あしざわ けいじ)

1973 東京都生まれ
1995 横浜国立大学建築学科卒業
1996-2002 architecture WORKSHOP
2002-2004 super robot
2005 芦沢啓治建築設計事務所

連絡先(設計に関するご相談)
芦沢啓治建築設計事務所
113-0004
中央区東日本橋3-3-17 202号
tel 03-5847-7770 / fax 03-5847-7771
info@keijidesign.com
http://www.keijidesign.com/

建物の写真: © Daici Ano (*1.2を除く)

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