第3章 投資計画を立てる【2】合理的ローン返済・金利・損益分岐点編
条件変更でローンの早期完済
金利上昇局面で、変動金利型の住宅ローンを借りている方は支払額の上昇も懸念されます。このような時には、金利負担増を回避する方法として、月々の返済額を増額する「条件変更」を提案します。 ここで1000万円を35年ローン、金利を3%で組んだ場合のことを考えてみると返済総額は約1600万円となります。仮に5年経過時点で100万円の「内入れ」を行い、以降も同額の返済を続けると、返済期間が5年間短縮され、返済総額は130万円近く減額されます。一方、条件変更の場合は月々5000円弱の増額をするだけで、100万円の内入れをした場合と同じように5年間の期間短縮が可能となります。ただし、軽減される額は約86万円で、内入れより少なくなります。
筆者としては条件変更の方が気が楽なのではないかと考えます。100万円だと大金ですが、返済額を数千円増やしてみるならば、思いのほか容易に決断できるのではないでしょうか。
金利上昇時の影響
返済期間によって金利上昇による影響が異なります。借入金2000万円で金利3%(元利均等返済)、10年金利固定型で10年後に金利が1%上昇した場合を考えてみましょう。35年返済の場合、毎月の返済額は7万6970円で10年後の残債は約1623万円。10年後に金利が上昇して4%になった場合を考えると毎月の返済額は8万5667円に上昇します。上昇額は8697円で、上昇率は11.3%になります。
では、25年返済の場合はどうでしょうか。同じ借入金2000万円で金利3%だと、毎月返済額は9万4842円で10年後の残債は約1373万円。10年後に金利が上昇して4%になった場合を考えると毎月の返済額は10万1559円に上昇します。上昇額は6717円で、上昇率は7.08%になります。
このように、返済期間が短いほうが毎月の返済額は多くなりますが、金利上昇の影響は低くなることがあります。これは返済期間が短いほうが元金の減りが早く、残債が少なくなることも影響します。
売却時の損益分岐点
投資用マンションだと毎月の家賃収入が入ってきます。このマンションを10年後に売却する場合に、家賃収入と売却損を相殺していくらで売れたら損をしないのかを考えてみます。なお、この損をしないボーダーラインが損益分岐点です。例として価格2000万円で家賃収入が年84万円(月7万円)のマンションを現金で購入した場合を考えてみると、年間の家賃収入84万円から年間の経費(管理費・修繕積立金・税金等)20万円を引くと、実質年間収益は64万円。10年間の実質収益は640万円になります。このマンションが10年後に価格が2割下がっていたとすると1600万円で400万円の売却損になります。しかし、収益は640万円あったので、結果として240万円得したことになります。実際には売却時に税金等も清算しなければなりませんが、値下がりと損は別問題になるケースがあるということがおわかりになっていただけたと思います。
ローンを組んだ場合にはローン金利やローン手数料が発生するため、その分だけ売却分岐点価格が上昇します。またローン途中で売却する場合は、ローンの残債を一括で支払わなければなりません。あまりに短期間でローンを解約すると支払ったのは利息ばかりとなるのでローンを返すのではなく、いかに元金を返済したかが損益分岐点に影響します。
所有期間を定めて借入れでマンション投資をする場合は、売却時までにローンを完済し、値下がりリスクは利回りに織り込んでおく必要があり、この場合にも値下がりの少ないマンションを選ぶことが重要です。
野中清志 (のなか きよし)
株式会社オフィス野中 代表取締役。
住宅コンサルタント、宅地建物取引主任者。
1956年、東京都生まれ。1981年、明治学院大学経済学部卒業後は、大手マンションディベロッパーに就職。営業として華々しい活躍を遂げる。その後、ワンルームマンションディベロッパーにて執行役員を歴任し、2003年に株式会社オフィス野中を設立。
「お客様の立場に立った購入アドバイス」を実践し、不動産の豊富な知識と業界20年の経験を活かしたコンサルティングが好評である。講演、執筆多数。
|
|
ワンルームマンション投資法
サラリーマン・OLでもできる! 家賃で安定収入確保。
低リスク・高利回りはウソじゃない! 不動産投資アドバイザー 野中清志 著 金利・地価上昇でどうなる? 脱デフレ時代のマンション投資。注目エリアから業者の選び方まで最新の不動産投資情報が満載! |