建築基準法改正・施行後の影響
2007年を象徴する漢字に『偽』が選ばれましたね。 食品の産地偽装、不当表示、それに『耐震強度偽装』。 2007年6月20日、耐震強度偽装問題を受け建築基準法が改正されました。 施行されて半年以上を経過しましたが、その影響がマスメディアでも取り上げられるようになってきました。 今回はこの『建築基準法改正・施行後の影響』を検証してみましょう。
基準法改正へ−揺らいだ信頼性
そもそも、建築基準法はなぜ改正されたのでしょうか? 1988年、それまでは行政機関が建築確認業務をすべて行っていましたが、民間開放することにより自由競争原理が働き、審査の迅速化、審査費用のコストダウン化、業務の質の向上が期待できるものと当時は期待されていました。
しかし、国の責任で行う審査をほぼ丸投げ状態で民間に任せたことが、競争による質の低下や偽装につながり、2005年の耐震強度偽造問題へ発展、審査機関や建築士への国民の信頼は大きく揺らいでしまいました。 問題となったいい加減な審査やずさんな構造計算を防ぐため法律改正は必要となり、施行されました。
審査停滞−空白の5ヶ月間
改正法では構造計算のチェックが厳格化され、申請書を二重でチェックする運用方法になっています。 審査は購入者にとってはとても大事なことでありこのくらい慎重にチェックすることはよいことですが、申請手続きの細目にあいまいな部分が多く、運用の不備は否めないまま施行してしまいました。 さらに、改正法施行よりも建築士、設計士、審査機関などへの罰則が先行して決定されたため、審査機関のチェックはより細かく慎重なものになりました。 そのため、旧法では申請から確認までの期間がおよそ3週間だったものが、改正法ではおよそ2ヶ月以上かかるようになり、新設着工が大幅に遅れ、建築業界は大混乱に陥ります。
住宅着工棟数は2007年7月の対前年比を23.4%も下回ってしまいました。 対前年比を20%以上割り込んだのは、21世紀になって初めてのことであり、8月以降、減少幅は拡大します。
これを受け、国土交通省は2007年8月7日に『建築確認等の手続きの円滑化について』という通達を各都道府県担当部署に出したのですが、それでも歯止めがかからず、同年11月14日に『技術的助言』を出しました。たとえば、『軽微な変更』について、少しでも基準法に抵触すると認めていなかったものを、安全・防火・避難上に問題なければ認めるように緩和するといった内容のものです。 これによって、確認申請自体は沈静化に向かっていきました。
しかし、施行した6月から沈静化に向かいはじめた11月までの約5ヶ月間の着工遅れが今現在も尾を引いており、今後の建築投資に影響が出ることも避けられなくなっていったのです。
懸念される今後の影響
建物が予定通りに建てられない・・・。 これは、建築の際の資金繰りに多大な影響を与えます。 たとえば、建築予定地を金融機関から借り入れて購入し、その後、物件を建築、竣工後その建築物からもたらされる収益を返済に充てていくとします。 土地は先に購入しますので、その購入代金は建築物が出来上がる前に、収益が上がる前までの期間にかかる利息を予定して資金を借ります。
しかし、竣工が遅れる=収益が上がってくる期間が延びるということですので、予定していた利息が余分にかかり、当初のシミュレーションが成り立たなくなってきます。 最悪、ビジネスチャンスを失って計画を断念する、といったことも考えられます。 これは、住居系に限らず、企業の設備投資にも同じことがいえるでしょう。
また、着工の遅れにより、建築物に設置する製品を納品できず、大量の在庫を抱えることになる設備関連業界も大きなダメージとなります。 中小企業では在庫を維持するコストを吸収できず、資金繰りに影響が出てきてしまいます。 このことを受け、中小企業庁は2008年3月まで金融機関からの借入れに対し公的保証の2倍まで使えるような支援策を出しています。 支援策を講じないと、倒産が頻発しかねないからです。 このように、建築基準法改正は日本経済に大きく影響しています。
以上が【建築基準法改正・施行後の影響】です。 11月以降、確認申請問題が沈静化した後、今まで申請を待っていた建築物が一気に着工できるとなったら・・・。 建築中の人手不足、竣工時期もほぼ同じになることによる大量供給→売れ残りといった事態も考えられるのではないでしょうか? ホームページ上に掲載されている物件がコンスタントに入れ替わっている会社は、資金繰りがよく、安定した販売計画を立てて営業しているかもしれませんね。




