賃貸経営と消費税(1)簡易課税制度
賃貸住宅経営は『住宅の貸付』に該当しますので、消費税は原則として非課税です。 ところが、入居者専用の駐車場であっても、契約形態によっては駐車場の収入部分は課税売り上げになる場合があります。他に課税売上げになるものがあれば、それらに上乗せして課税されることになるため注意しましょう。
家賃って?消費税は?
賃貸住宅経営は賃貸住宅については『住宅の貸付』に該当し、消費税は非課税扱いとなりますから煩雑な消費税の計算は必要ありません。
住宅を賃貸するにあたり入居者から支払われるお金には、家賃の他にも「共益費」、「駐車料金」、「礼金」など、いろいろな名目がありますが、それぞれの扱いは次の通りです。
家賃…消費税はかかりません。
共益費…家賃に付随するものとして、消費税はかかりません。
礼金、保証金等のうち返還しない金額…消費税はかかりません。
駐車料金…契約形態によっては消費税がかかります。
ここで注目いただきたいのが『駐車場の契約形態』です。 入居者が車を所有しているいないにかかわらず、付随している駐車場を家賃込みで自由に使える場合は駐車場を含めて『住宅の貸付』として扱い、非課税となります。しかし、建物賃貸借契約と別に駐車場使用契約が締結されている場合は、駐車場は『住居の貸付』とは別物という扱いになり消費税の課税対象となります。
では、店舗併用住宅の場合はどうでしょう。 テナントへの貸付や貸し倉庫などの非住居の貸付は『住宅の貸付』に該当しませんので課税売上です。 この場合は、家賃のうち住宅家賃の部分を合理的に区分し、その部分の金額は非課税になります。 その他、食事付きの下宿などの場合も、住宅の家賃部分と食事部分の金額を区分し、食事部分が課税となります。
簡易課税制度
基準年度(前々年度)の課税売上高が1,000万円を超えると消費税課税事業者となり消費税を納めなければなりません。
これは1つ1つの事業単体で判断するのではなく、合算して1,000万円以上の売上高と考えます。 つまり賃貸住宅とは別の契約形態である駐車場の賃貸だけでは1,000万円以下でも、販売収入など他に事業収入がある方は、これらの収入と不動産の収入を合算して判断されるので税金の対象となるということです。
消費税の計算方法は次のとおりです。
(課税売上(税抜)×(税率)5%)−(課税仕入(税抜)×(税率)5%)=納付する消費税額
賃料を得るため、経費として固定資産税、減価償却費、借入れに対する支払い利息、水道光熱費など
さまざまな経費を支払っていますが、残念ながら課税対象となっているものしか『課税仕入』に該当しません。
つまり賃貸経営の場合、差し引ける金額が少ないということになってしまいます。
そこで、基準年度(前々年度)の課税売上高が5,000万円以下の場合は『みなし仕入率』が使える簡易課税制度を選択することができるようになっています。 この制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというものです。この一定割合を『みなし仕入率』といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等、サービス業等及びその他の事業の5つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率を適用します。不動産賃貸業は第五種事業に該当します。
簡易課税制度を利用する場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出してください。 なお、簡易課税制度を利用すると、2年間は変更できません。 不動産賃貸業で簡易課税制度を選択した場合は次のように計算します。
課税売上(税抜)×(みなし仕入率)50%×(税率)5%=納付する消費税額※みなし仕入率
第一種事業(卸 売 業) :90%
第二種事業(小 売 業) :80%
第三種事業(製造業等) :70%
第四種事業(その他の事業):60%
第五種事業(サービス業等):50%
では、簡易課税制度を選択した場合としなかった場合で次の例を比較してみましょう。
●事業内容・・・・・・不動産賃貸業のみ
●課税売上・・・・・・不動産賃貸収入(住宅の貸付以外)1,500万円(税抜)
●課税仕入・・・・・・修繕費、管理手数料、水道光熱費、広告宣伝費等 300万円(税抜)
≪簡易課税制度選択なし≫
(1,500万円×5%)−(300万円×5%)=60万円
≪簡易課税制度選択あり≫
1,500万円×50%×5%=37.5万円
消費税は入居者負担とすることが原則になります。
課税業者に該当するのでしたら毎月の賃料と消費税を一緒に徴収しておきましょう。
以上が【賃貸経営と消費税(1)簡易課税制度】です。
不動産賃貸業の場合一般的には経費が少ない為、消費税は簡易課税での計算 が有利と思われます。
しかし、課税売上高だけを基に計算している『簡易』な方法ですので、場合によっては不利になるケースもあります。
次回はその点について解説していきます。
情報提供
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